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ドレーキップ窓

雨だれ・防犯・断熱・網戸・掃除の全てがかなう窓。

雨だれ跳ねて嫌すぎ外開き

日本家屋が軸組み工法に襖や障子や戸板だったためだろう、 引き違い戸は昭和のスタンダードだった。しかもアルミサッシ。

吉祥寺の実家がまさにそれで、それが普通だと思っていた。 風の強い日はびょーびょー音がして、寒い冬はアルミサッシが結露する例の窓。

でも、技術は進んでいる。耐光性の増した樹脂サッシが普及し、 引き違いではなく開き窓がここ20年の新築には普通に採用されている。 つまり断熱性能の向上である。

そんな借家に住んだ経験から、そのすばらしさは身に染みて理解している。 でも問題点が無くはない。

雨だれが跳ねる

最初、この借家に越してきて「なんで窓際の床が退色しているんだろう?」と思ったが それが単に紫外線による劣化だけでなく、跳ねた水の影響と理解するのに時間はかからなかった。 これは雨の日に窓を開けるな、という一言で片付けられる問題だが、 開いている窓はあまざらしとなり、跳ねる水滴が屋内の窓辺をひどく汚すのである。 そして窓を開けたまま寝ていると、雨が降ってきたことすら気が付かないわけで、 雨の日に窓を開けるな、という論理を通すには、窓を開けたまま寝るな、という論理に展開される。 そんな無体な……。

防犯性能が悪い

もちろん窓を開けたまま寝るというのは、防犯上よろしくない。 出かける時に窓を開けたままなんてのも論外である。 だからといって鉄格子を入れたくない。 これを仕様と納得するのも一つの手だが、 諦めているといえば問題点ということも可能だろう。

掃除

窓掃除、外からやりますよね。でも、それ外に出られるからですよ? もし二階やロフトならどうします?はしごをかけるのですか? 引き違いならばまだなんとかなった窓掃除、これが外開きの窓だと最悪である。 縦滑り出し窓なら隙間から掃除できるけれど、横滑り出しだとかなり厳しい。

窓の開閉時に網戸を開けなくてはならない

虫が多い季節は網戸は必須だが、窓を閉めるときに問題が生ずる。 引き違い窓ならば問題はなかったが、 外開きの窓は窓を閉める時に一度網戸を開けなくてはならないのだ。 しかも近年のロール収納タイプは確率的に虫を巻き込みながら。 そして最初に壊れるのが網戸である。引き違いの時はそんなに壊れなかったのに。

全部解決、ドレーキップ窓!

YKKAP の商品名は「ツーアクション窓」。エクセルシャノンなどからも出ているが、 ドイツ語の「回すドレーン」と「傾けるキッペン」がつづまって「ドレーキップ」、 日本ではまだまだ珍しい窓であるが上述の問題点が全て解決する。

以下の3つの写真を見ながら説明しよう。

全開・掃除モード

まずはこちら。鉛直軸で内側にでっかく開きます。

私はコーヒーのチャフを吹き飛ばすときにこのモードで開いて網戸を半開して ドライヤーでぼぅぉーってやる。すごく便利。

もちろん掃除は屋内からできる。でも写真の窓はFIX部分があるから結局外にでるわけだが、 高窓やロフトの窓は FIX を無くし、全部この窓にした。メンテナンス性抜群!

クローズモード

続いてこちら。高気密でバッチリ締まります。

マルチポイントロック機構といって、複数個所で窓をがっちりと押さえつけ隙間がなくなる。 ものすごい機密性能。このまま成層圏に行っても大丈夫(な気がする程)。

換気・防犯モード

極めつけがこちら。水平軸で内側に上部がスリット状に開きます。

このモードで換気したまま寝たり、外出が出来るのである。 まず、雨が降ってきても屋内に雨だれが跳ねることはない。 そして悪しき人が侵入しようにもこの隙間では入れず、全開モードに遷移するには 必ずクローズモードを経なくてはならない構造のため、結局侵入できない。

もうお気づきの通り、以上の3モードが1つの窓のハンドル操作で切り替わるのである。 そして一度も外に開いていないのである。

と、いうことは、網戸は設置したままでよい、となるわけだ。 窓の開閉に網戸の開け閉めは必要ないのである。

問題点

こんな凄い窓だが、問題がないわけではない。

第一、高い。そしてたぶん、あまり大きく作れない、気がする。

ないわけじゃない。 ドレーキップドア ってのもあって、 ドレーキップ窓つきフォールディングドア とか、メチャメチャかっこいい!

機構が複雑なので大型化が難しいというのもあるかもしれない。 そんなデカいのがほしけりゃヘーベシーベにしろ、ということだろうか、余計に高価になる。 ということで、一言でいうと高い。

第二に、カーテンが普通に設置し辛い。 内開きということは、カーテンレールに干渉するのである。 どれくらい内側に開くかはメーカーと機種により様々なのでカタログでよく確認しないといけない。

でも窓の至近にカーテンというのは、そういうものだとする文化的認識の問題であり、 それを拒むドレーキップはある種のアンチテーゼともいえる。 つまりここからアウフヘーベンできるのだ。 ドレーキップとかヘーベシーベとかドイツ語だから、あえてドイツ語。

私の場合は上の写真にあるように、ロールスクリーンの設置アームを壁からなかり離したが、 これにはちゃんとした意味がある。結露は空気が動かないことにより冷却され惹き起こされる。 つまり、空気が動いてれば、空気はそもそも断熱性が高いことからわかるとおり、 冷却されることなく、結露することもなかなかないのだ。すなわち、結露を拒むには 空気を動かすのが一番、茶畑の扇風機作戦である。詳細は別のページに書くが、 簡潔に言えば、このロールスクリーンの真下には床下からの換気用グリルが来るように 私は設計したわけだ。もちろん基礎断熱だから出来る技である。 ロールスクリーンを床まで降ろすと床下からの暖気がロールスクリーンの外側を通って 窓の表面の空気を動かして結露を拒み、そのままロールスクリーンの設置アームの隙間を通って 屋内側に循環するという仕組みである。これぞ、アウフヘーベン。

第三に、窓枠や窓の手前に物を置けない。 置くな、ということだろう。もしくは掃除のときは物を退かせ、ということか。 これを受忍不可とすれば振出しに戻るか、スタートレックのフォースフィールドの実現まで待つしかない。

感想

すごい。 前評判の高さから、うちの新築は引違い窓を(ヘーベシーベを除いて)ゼロにしたのが良かった。 気密性が高すぎてドアや窓を開ける時に「んごっ!」てなるのは、 最近の高気密住宅では常識かもだけど、これは体験すると感動する。

厳冬期はロスナイのみで窓はあけることはないが、春から秋は好きな時に開けられて そのまま閉め忘れてもなにも困らないというのはヒューマンエラー対策としては最高である。 これを専門用語で本質安全という。

そして掃除のしやすさ。詳しくはページを改めて報告するが、換気扇下の外壁汚れを掃除すべく 敢えて換気フードの下にドレーキップを設定したほどである。

また、防災上の観点から全ての部屋やロフトの奥などにドレーキップを設置した。 これは火災や家具転倒で(そういうことはないようにしているが)逃げ道が万が一なくなっても 内側に開くという特性により、確実に脱出が可能になっている。

令和はこの窓が普及すると思いたい。

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