© たかやまそら

地球の色はそらの色

地球が青いことを紀元前の人が既に予言していた。

鵬から見た景色

『荘子』の「逍遙遊第一」 にはこうある。

天之蒼蒼,其正色邪? 其遠而無所至極邪? 其視下也,亦若是則已矣。

訳するとこんな感じ

天の蒼蒼そうそう、それは本当の色だろうか? それとも、遠くにあって果てる所が無いゆえの色だろうか? ほうが) 下を見れば、またおなじように見えるだろう。

つまり 意訳すると

大空の青が本当にその色なのか、それとも無限の彼方ゆえの青だろうか、 ほうが) 眼下を見下ろせば、同じように青いだろう。

とでもなろか。 実はこれ、地球が青いことを予言しているとも読める。

ほうは中国の有翼日輪、すなわち太陽ハロ

ちなみにここで補った ほうが) は、引用の前文を受けたものであり、

すなわち、雲のような翼で高度9万里を南に向けて飛び去る 大きさ何千里かも判らぬ伝説の巨鳥「ほう」から下界を見れば、という意味である。

さて、この巨鳥「ほう」……

……これらの特徴は、すべて太陽ハロで説明可能であり、 以前から私が日本民俗学会や雑誌で毎年のように発表しているように、 フラワシ などと同様、 これもまた太陽ハロ(たとえば次図)すなわち有翼日輪なのだろう。 要するに怪鳥でも空想でもなんでもなくて、実際に目撃された大気光学現象だろうということだ。

ほうは静止軌道にある?

伝説に実測をあてがう無粋はともかく、古代中国の1里が400メートルならば、9万里とは36000kmである。 ほうの飛行高度36000km というのはハロを作り出す氷晶の分布する対流圏よりもけた違いに高い。 ハロは光学上、無限遠に見えるのだから、それは仕方がない。とても遠いという点において問題はない。

問題は、その値である。高度 36000km だと? 地学や物理の専門家ならすぐに判るだろう、この値、 geosynchronous orbit つまり静止軌道の高さとほぼ等しい。

まさか紀元前の彼がそんな値を踏まえて記したとは思わないが、 なかなかに良い値である。どう良いかって? その距離からの画像なら毎日、気象衛星から送られてくるのだ。 タイムマシーンがあっなら荘子に 気象庁の画像 を御覧入れたい。

ただしこれはレイリー散乱補正#f02 をかけている為、ほうの視点からの画像と若干違う。

より近い色となると冒頭の画像#f03 を荘子にはお勧めしたい。

おぉ、たしかに そら と同じ色だ。


メモ

レイリー散乱補正

レイリー散乱とは、空がそらいろに染まるメカニズムである。

気象庁のカラー再現画像 には

人間の見た目に近くする画像作成技術及び大気分子により 太陽光が散乱される影響を除去する技術 (米国海洋大気庁とコロラド州立大学が開発) を用いて作成しています。

と、ある。

「人間の見た目に近くする画像作成技術」の部分は調べてないが、 「大気分子により太陽光が散乱される影響を除去する技術」の部分はレイリー散乱補正のことである。 くわしくは気象庁の「 トゥルーカラー再現画像の利用について 」に文献などが紹介されている。

と、いうことは、「天之蒼蒼」が大気のレイリー散乱に起因する以上、 荘子の予言する「其視下也亦若是則已矣」の部分を確かめるにはレイリー散乱補正した画像を示しては ダメ である。

冒頭の画像

冒頭の画像は、NASA のアポロ17 から撮影された画像である。 撮影した距離は地球から 29000km とあるので、9万里と比べると少し近くなってしまうが、 The Blue Marble には、

The end of most film magazines used on the Apollo missions include a photograph, presumably taken on earth, of a "KODAK Color Control Patch" on a chart containing mission and camera data. This color chart was used to calibrate the above photograph to better approximate real-world colors.

とノートされるとおり、 こちらはレイリー散乱補正が為されておらず、より実際の色に近いことがわかる。

ただし、掲載にあたって、正方形の外に黒(#000)を塗り足しました。

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