カンナビ 1
ページの文字をつなげて読むと短歌になる本・カンナビ編
新刊紹介
2024年4月29日に私の新刊がデザインエッグ社から出版されます。 書名は『ページの文字をつなげて読むと短歌になる本・カンナビ編』です。 どうぞよろしくお願いします。
カバーの写真解説
これは有名だから解説しても全く差し支えないでしょう。 左の建物は奈良県の唐古鍵遺跡に復元された高層建物。 発掘された土器にこんな絵が描いてあったことから復元された。 唐古鍵遺跡には大型建物跡も発掘されている。
その大型建物跡の位置から冬至の太陽がどこから昇るのかを カシミール3Dで計算した結果がカバー写真である。 太陽が昇るのは「三輪山」である。
逆に言えば、太陽が三輪山から復活するように見える場所……現代の唐古鍵遺跡……に 大規模な祭祀場が造られた、とも考えられる。#f01
では三輪山とは一体?
阿知女作法では 「みわやまに ありたてるちかさを いまさかへては いつかさかえむ」 と唱えられる。#f02 その「三輪山」とは一体なにか?
この本には「おまけ」として31ページにわたって 日本の聖地がカラー写真で掲載されています。 ただし、写っている山や神社がそれぞれどこかは一切記載しておりません。
全ての場所が判明した時、きっとあなたは日本神道の神秘の神髄に触れることができるかも?#f03 全国の神社パワースポット・マニアに捧げる、究極の謎解き?にどうぞご挑戦くださいませ。 (なお、31ページの謎解きは本書の目的ではありません。あくまでもおまけです。)
本書の目的
俳句や短歌が全文引用できることは有名である。 詳しい解説は松田ひろむ氏の 俳句における引用と著作権について が判りやすい。
俳句という短詩においては「引用」は、「全文引用」の形とならざるを得ないが、 それも差し支えない。
そしてその分量も松田氏は
ただし、本文の量に比較して「引用」ばかり、あるいは一冊の句集を、 そっくりあるいは相当部分を「引用」ということはあり得ない。
と指摘する。無論、著作権法第一条の記す 「著作者等の権利の保護」を前提とすることは言うまでもない。
だが、もし仮に1冊の本が一首の短歌のみで構成されていたらどうなるか。 全文引用は「著作者等の権利の保護」に反するのではなかろうか? 全文引用が無理ならば何割まで引用してよいのか。 松田氏はそのあたりの言及をしていない。
さて、本書の目的は私の詠んだ短歌を出版することである。 本書は1ページにつき1文字ずつ、31ページにわたって拙詠を記載した。 つまり、本書には短歌が一首掲載されていることになり、 本書の内容はそれ以上でもそれ以下でもない。
従ってこの本に掲載された短歌は原理的に全文引用不可と思われる。 どんな短歌が掲載されているかは実際に手に取ってお確かめください。
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メモ
- 唐古鍵から冬至の日の出に三輪山
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北條氏の研究を参照されたい。 たとえば北條芳隆(2017)「第6章 唐古・鍵遺跡と年間の日の出方位」『古墳の方位と太陽』同成社 など。 北條氏は唐古鍵より冬至の日の出方向に三輪山(その麓に大神神社)、 夏至の日の出方向に高橋山(その麓に石上神宮)が建てられたことを指摘する。
- 阿知女作法
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阿知女作法は宮中の神楽歌の一つで、意味の多くは不明であるが、 伴信友などにより死者蘇生の呪文との関係が指摘される。 筆者は樋田竜男(2018)「阿知女作法と泣き女」『日本民俗学会第70回年会研究発表要旨集』p.84 にて、阿知女を泣女と考える。 阿知女作法には石上や三輪山が登場し、 石上神宮から冬至の日没方向に唐古鍵があることから興味深い。
- 神社狼煙台説
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日の出・日の入の方位線を辿ることで、かなり多くの神社の配置に説明が可能である。 本書の写真がどこかを探る過程でこのことは充分に納得されることだろう。 通常、神社の起源の一つとして衰え行く太陽の復活を冬至に祈る考えが想定されるが、 しかし神社にはどうやらそれだけではなさそうだ、というのが本書の背景にある神社狼煙台説である。 この仮説は、高地性集落が狼煙台であるならば麓の集落からは24時間体制で これを監視する必要があり、その行為が宗教儀礼化したものが御神体山の遥拝と考える説である。 詳細は樋田竜男(2019)「神社(山宮)と高地性集落の同一性:狼煙監視の視点から」『日本民俗学会第71回年会:研究発表要旨集』p.101 を参照のこと。